ね、一緒に入っていい?
とスザクの眠るベッドのふちに顎をつけて、クラブハウスに戻るのだと思っていたルルーシュからそんなことを言われて。
その、強請るように見上げてみせた紫電がとても無邪気な可愛さに見えてしまったから、
『僕はもう平気だから帰れ』なんて言えず、おずおずと横にスペースを空け、体温がしみて温まったシーツの中に
黒髪を招いた。
『えへへ』と何故か笑いながら入って来た痩躯に胸を騒がせつつ、僕は君に乱暴した男なんだぞ、と低く悪態をついたのだが
そんなこと思ってないよと彼女はスザクのそんな言葉を払い落として、柔らかなクッションに頬を埋めた。これはリビングの
椅子にあったものを拝借してきたものである。
スザクは身を寄せるのに躊躇いもないルルーシュにどうしたものかと思ったが、小さな手がシーツの中で袖を引くから
大人しく自分も彼女のように横になった。近くにある丸い瞳に頬が知らず紅潮する。『電気を消したい』と言ったのだが
ふるふると首を振られて、もう本当にどうしてやればいいんだ……と頭を抱えたくなった。これでは、本当にまるで。
「俺はスザクが好き」
「……」
「スザクは?」
次はお前の番だよ、と唇から吐き出されて、白い瞼がそっと下ろされた。
一緒に居たいとか。
騎士になってほしいとか、自分のものにして欲しいとか。
好きとか。
(僕が言えもしない言葉を)
押し付けるでもなく、そっと伝えてくれるしなやかな暖かみに、胸が押し潰されそうな苦しさを味わう。
多分きっと自分はルルーシュをもう好きになっていると思う。でも、どこか怖い部分があるのだ。何がというと、この気持ちは本当に
自分自身から滲み出しているものなのかということ。
それと、好きだと伝えた所で、……一体どんな関係になりたいのか、ということも、まだ解らなかった。
「でもこれだけはきっと言える……」
スザクが離れることを恐れて、袖を摘んだまま離さずに寝入ってしまった彼女を見つめて、瞬きする。
先ほど手製の粥をすすりながら味わった優しい感覚は嘘じゃない。
ああ。---------そうだ。だから、きっと。
「ルルーシュ」
きみをまもる。
この誓いだけは嘘じゃない。
君の名のコノテーション
「決闘なんて馬鹿げている」
まるで、国取りをする場ではかならず自身の剣を抜いたという、あの暴君のやり方を思い出す、とロロは俯く銀髪を見下ろして
言った。
彼は別にロイドの身体を引きとめて、拉致するとか暴行するとか、そんなことをしようとしているわけではない。
ただバラバラになったピースを纏めるには図面が必要である。一年前起きたシュナイゼルの突然の死に関わる問題には
ロイドが深く絡んでいたというのはギルフォードから知らされていたから、まず彼の存在を見つけることが急務であると
思っていたのだ。
図面とは彼、ロイド・アスブルンド。
前総督の直属の部隊の主任。
……計らずしも意外と簡単に、彼を捕まえられた。ロイドはスザクの後始末をする為に無防備に中庭へ出て来ていたから。
「お尋ねします、伯爵」
「何だい」
「貴方は一度二度とルルーシュ殿下を裏切った身で、また彼女の身柄を引き取って大学部に預かった」
「ああ」
「教えてください。神根島で何があったんです。正確に言ってくださいよ、枢木少佐がしたことも全部含めて」
ロロはあの場に居なかったギルフォードから何よりも『スザクの動機』について調べてこいと言われていた。彼にとっては
全くの他人であるスザクのことなんて気にする問題でもなかったが、スザクの処刑を任されたギルフォードにとっては
一番の気に掛かる問題であったのだ。すなわち、スザクがどうしてシュナイゼルを殺したのか。
ルルーシュの騎士だったから?
ルルーシュを独占したかったから?
考えは色々浮かぶ。
「……知ったところで何になるっていうんだい。ギルフォード卿も……」
僕が迷惑をかけたことは知ってますけどねぇ、やり方があんまりじゃない、と眼鏡の奥の瞳を窮屈そうに伏せて言った。
手首だけベルトで締められた格好をして、ハの字に伸ばした足を腹のほうへ引き寄せる。目の前にいるロロは後ろにあるマットの山に
背をつけて、その様子を黙って見つめていた。
「伯爵?」
「言いますよ、……僕が知ってる限りのことはね」
ふ、と皮肉げに笑って、とうとうという感じに口を開いた。
「僕は、殿下とスザクくんが知り合う前から、亡きシュナイゼル閣下、クロヴィス殿下と、扉を開ける計画を練っていた」
「その扉とは、神根島にある?」
「ああ。数値としての計算ならそこから先に繋がる出口は式根島であると解っていた。クロヴィスのほうは式根島で遺跡を調査するという
名目でエリア11へ渡り、シュナイゼル閣下と僕は英国に残って、他の親族が不審に思わないよう地下で研究をしていた。
……そこに、手伝ってくれるということでセシル・クルーミーという女性と、ルルーシュ殿下のお母上、マリアンヌさまが
入ってきたんだ」
随分と正直に、ぼそぼそと内情を吐露していく。
「そう、ならルルーシュ殿下の特異性に気づき、その彼女を材料に捧げたというのがそのマリアンヌさま、でいいんですね」
「ああ。特異性というよりも才能といったほうがいいかもしれない。まあ、代わりにKMFとの相性は最悪だったんだけれど
そこはスザクくんが補うようになっていたから……周りも彼女の身体のことについては何も気にしなかった」
「でも伯爵と閣下は、ルルーシュ殿下を犠牲にしようとしたんですよね。母上と同じように」
「……」
「勿論、ナナリーという彼女の実弟もね。ふふ、まるで貴方がたにとって人は駒のようだ」
ロロは背伸びするように身体を反らして、……ふうと息をついた。肉親間の争いはブリタニアの歴史において大きな比重を
占めているものだが、ロロには別にまた関心があった。枢木スザクの殺した動機も、そこに至る過程も、全部深く絡んでいるのは
ブリタニアの暴君シュナイゼルであったから。
「誰もルルーシュ殿下のことには気づいてなかったと言ったけれど、伯爵。枢木少佐は許せなかったんじゃないですか」
「--------」
「貴方が愛情をもって接していたとしても、犠牲にすることには変わりなかったのがサクラダイトの流失事件じゃないですか」
「そうだね、だからスザクくんは僕や閣下から、色んなものからルルーシュ殿下を引き離そうと躍起になったんだろうね。
孤立ではなく独立を望んだ以前の日本のように。……だから彼はその道を阻もうとしたシュナイゼル閣下を殺した」
「……。殺した、その本意は?」
「どうだろうね、他人だから……いや、本人であってもあんまり覚えていないのじゃないかな。僕は一年前の神根島で
閣下とスザクくんからは離れていたし、何より、殿下が……ああ、なったのも……」
「そうですよね」
はじめにした挨拶の声よりもいっそう柔らかなものにして、ロイドの前に一歩出た。ロロはそれこそが真相だ、というように
微笑んで、両手を封じた銀髪に屈みこむ。表情を伺った、血の気は薄いように感じた。そうか、彼もトラウマとなっているのか、と
一年前の花の記念日が人々に与えた影響の重さを知った。
「つまり伯爵、こういうことなんですね。……枢木少佐の暗殺も、殿下の自刃も、衝動的なものだと」
「……言葉で片付けてしまえば、そうだろうね」
オブラートに隠しもしないロロの簡潔な話し口に、俯いたままにしていた眉間にロイドは皺を刻ませた。
不快だとは言わずにも態度に怒りは滲ませて、ロロを近くで睨む。うっそりと少年は笑っていた。ギルフォードから頼まれた
枢木スザクの暗殺の動機が判明したからか。もしくは、自分が考えていた通りのことが実際に起きていたことに満足したからか。
どちらとも知れない----------そんな顔をしていて。
「ロロといったね」
「ええ、……それが?」
「その名前は誰にもらった。いや、それ以外にも君の出生について訊きたい」
「総督から任された……というだけで理解が出来ませんか?わかりやすく言うと、現在のブリタニアの犬です」
ずっと閉じこもりきりだった倉庫から出ようと、立ち上がりロイドからロロは離れる。銀髪がさらりと揺れて、少しだけ隙間のあいた
鉄製のドアに目を向けた。そこから差し込んでくる日の光に朝だということを告げられる。でも反射して浮かび上がったロロの
眼差しは鋭利だった-----------既視感を覚える。まるで、近くに、ずっと昔居た誰かを思わせるような。
「君は……」
ルルーシュとナナリーの容貌を足して割ったような容貌だと思っていた。
でも実際には、その二人よりもっとずっと似ている人物をロイドは知っている。
(まさか)
「閣下の」
「愛人は作っておくに限りますね、伯爵。まあ僕は遺伝子だけ頂戴した別の腹の子どもですが」
にこりと、最後に笑ってロロは扉から出ていった。
ロイドは一人体育倉庫に取り残され朝を迎える。少年は彼から聞き入れた情報を頭で反芻しながら
肩まで腕をあげてぶんっ……と振ってみせた。袖元に仕舞いこまれていた刃先が飛び出してくる。それを目前に翳して
朝日に輝くナイフに、水晶より透明な紫の視線を向けた。
きれいだ。
国を革命するには犠牲がつきものだ、と。きっと血だけ同じくするシュナイゼルが生きていたら言っていただろう。
でもロロはそれに同感するが共感はしなかった。だったら枢木少佐とその皇女の結末は何を生み出すことが出来たのか。
自分を犠牲にして得られるものなんてたかが知れている……。
「ぼくは居場所が欲しい」
むしろその居場所を放棄して自分に刃を返したルルーシュに、不穏な思いはつもりにつもっていた。
(まずは)
花嫁を舞台から引き摺り下ろす。
*
「カレーン、おはよー!今日は早いんだね」
「……いつも遅刻してくるわけじゃないわ」
後ろから飛び出してきた同級生であり、同じ生徒会役員のシャーリーのしてきた挨拶に
不服げに髪を揺らし、穏やかな顔にむずかしい顔を返した。きっと水泳部とかけもちで部活をする彼女とは
気力からして違うのだろう。
丁度昇降口へと歩いてる途中だったので、一度振り向いた後また前を向きなおし、一人で先に歩いていってしまう。
酷いなーと後ろから続いてくる声に苛苛としながら、カレンは明朝突然シュタットフェルトの窓からやって来た
彼の言葉を思い返していた。
『スザク?貴方、どうして』
二人で会う時は学園の中か地下だけにしようと決めていたはず。しかも、薄暗がりの中にいる彼の姿は
セザル・オーウィンのものではなく、黒ずくめの内偵の格好だった。
『急にごめん。……少し、籐堂先生の所に行ってこようと思う』
『学園はどうするの』
『それはね、ちょっと問題も起こしちゃって……僕自身も出ないほうがいいと思うんだ。またすぐに帰ってくるよ、用を済まして』
『その用って何なのよ。あと、起こしちゃった問題って』
カレンの目線が鋭くなる。スザクは格子の端にしゃがみこみながら、彼女の瞳を受け止めていた。
しかし質問には答えず、逆に質問を向けた。
『僕は何に見える……?』
『え』
『カレン、君は自分が何者なのかって理解しているか』
『そんなの、知りやしないわよ……』
唐突に何を言うのよ、とカレンは睨んだ。ふふ、とそれに苦笑だけ零してスザクは首を振る。ごめん忘れて、と言って
風のような軽さで窓から離れていってしまった。
(-------------一体どうしたっていうのよ、あいつ)
カレンはぼんやりと回想しながら、理路整然としたことを好むスザクの突飛な動きに疑念を感じていた。
それとは全く関わりがないといったようにシャーリーが『今日はいい天気だね』と言ってくる。それに適当に返事をしながら
再び正面を向いて、中庭のど真ん中に人垣が出来ていることに気づいた。何だろう、と周りを歩いていた生徒が
駆け寄っていく。
「はあ……。花壇でも荒らされちゃったかなあ」
確か問題になってたよね、と目を合わせて、それには『知らない』と首を振り、不審を感じてカレンもその場に走っていった。
「いやあああああああああああああ!」
悲痛な叫び声が朝のぼやけた頭にわんわんと反響する。
何なに?とシャーリーは耳を塞ぎながら追いかけてきた。カレンは目の前にいる生徒の隙間を縫うように歩いて
何とかその発信源である中央へ飛び出る。しかしまるで押し出されるようにされてしまって、勢いついたまま慌てて足をつき
同じアッシュフォードの制服に身を包んだ女子生徒が、青いビニールシートに泣き伏せる姿をまじまじと目にした。
「誰?」
「あ、確か結構前にルルをリンチしようとした三年のリーダーだよ。ジョルジュ・ラールって人のファンクラブで……」
「て、ことは」
このビニールシートの中って。
カレンが目線を落とした先には、涙で顔をぐしゃぐしゃにするその生徒と。
彼女が掻き毟るように抱いたビニールシート、その端からはみ出た白い手先、ごろんと垂れ下がった首元、
そこに突き刺さるナイフ-----------。
(これって)
その場に集まった生徒の中で、カレンだけはそのナイフの持ち主を知っていた。赤髪をくるんと閃かせて、じ、と向けられた
視線の持ち主を辿る。ルルーシュだった。彼女は胸の前に両手を組んで、静かな足どりでこちらへとやって来る。
シャーリーも、カレンも、見慣れた生徒であるのに挨拶もせず無言で人垣の中に入っていき、ジョルジュのファンクラブの
リーダーである生徒の前で立ち止まった。
「あんたなの?」
カレンが、聞く。ルルーシュは見下ろしたままそれを受けて、何か口にしようと紫電をあげた。そのタイミングで
蹲っていた女子生徒が平手をルルーシュへ向ける。ばちん!という鈍い音とともに黒髪がカレンの前で派手に散った。
そしてどさりと、細い身体は地面に落ちて。
「人殺し!ジョルジュを返せ、返せ……!返せよ!」
遠慮のない罵倒を受けた。シャーリーが止めようにも状況が悲惨すぎて一歩を出せない。カレンも少し混乱していた。ナイフの持ち主、
スザクの突然の欠席、ルルーシュの何も言わない態度……。
「お止め下さい」
無抵抗な黒髪に更に一発くれてやろうかと、泣き喚く女子生徒は踵をあげようとしていたが、
遠くから飛ばされた静止の声に、ぴたりと動きを止めた。そっと足を下ろしてビニールシートの身体を足元にしたまま
その場にいる全員が声の元を見る。
そこには女性のような印象をもつ栗色のやわらかい髪をした少年が居て。にっこりとした眼差しのまま小走りにルルーシュへ駆け寄った。
すぐに起こそうとして肩へ手をやる。そろそろと二人してゆっくりと起き上がり、全員はその二人を見つめながら
少年の口が開くのを待った。
「自己紹介します。僕は高等部一年のロロ。ロロ・ランペルージです」
え、と周りがざわめく。ランペルージという姓に反応したからだ。少年に支えられたままのルルーシュも、驚いたように
目を向ける。しかしよく見れば紫電の色は近いように思えた。同じ学園には居たが、校舎は離れていたとかそんな関係で
自分たちが知らなかっただけなのか?わからない。
けどルルーシュの素性について知るカレンだけは、この場にいる人間とは違う観点で、驚いていた。少年、ロロの微笑む顔で
呟かれる言葉の数々。どこか抑揚が”誰か”に似ている---------……。小さい頃、富士の山で会った”誰か”。
「大変胸が痛みましたが、朝発見した時には先輩はもう絶命していました。犯人はまだ捜索中です。だから、姉さんをひどく
詰らないでください」
ロロが取り澄ました笑顔で女子生徒の傷んだ顔を見る。
宥めるようなひっそりとした響きに生徒はまた崩れ落ちて、ジョルジュに被せたビニールシートの上で、またわんわんと泣き出した。
その様子を眺めながら、そっとシャーリーが近づいてカレンに『弟なんて居たっけ』と囁きかける。
(そんなわけないでしょ)
ルルーシュの実弟なんてカレンは一人しか知らない。今も心血を注ぐに値する尊敬の対象。
そんな彼と今突然現れたロロを同じにされては困る、と険悪な顔をしてルルーシュを見つめた。彼女は至近距離で
穏やかに喧騒を鎮めたロロを前に、言葉をなくしている。
続いてカレンは疑念に満ちた目で、ルルーシュの紫電を引き寄せるように睨みつけた。
目が合って、黒髪が困惑に揺れる。『知らない』と。この少年は誰だ、と。
どんな少年の詭弁とした言葉よりもその顔は、雄弁に虚偽だということを語っていた。
スザクは任務を言い渡されたときに渡されたカードを握り、籐堂の到着を待っていた。
彼はすぐにやって来て、道着姿ではない出陣用のパイロットスーツの格好をして、突然戻って来たスザクを不思議そうに
見返した。
籐堂の到着に膝をそっと地面につけて、灰色の鉄に覆われた無機質な室内でスザクは、ずっと師だと思っていた男を見上げる。
「先生」
「どうした」
「……皇族を捕まえて来い、という命令を僕は受けました」
ああ、と立ったまま師から答えが返ってくる。それに無言で頷いて、けれど、瞬間頭を振り、スザクは唸るように続きを口にした。
「貴方は嘘をついている」
「何を」
「……僕はそんな皇族は、知らない」
「----------」
「シュナイゼル・エル・ブリタニアと共に没した皇族の名はルルーシュ・ヴィ・ブリタニア。総督であったのに民衆を捨て
自ら命を絶ったと伝えられています。これは史実通りです。しかし、僕の目の前に現れた皇女は確かに生身の人間で、
生きていた」
「そうだ。行方不明にされていただけだと、そこまで我々は掴んでいる……君にはその彼女を生け捕りにしてこいと」
「でも先生」
スザクは立ち上がらず身を低くしたまま、見上げる翡翠を強くして籐堂の言葉を遮った。
「僕は彼女を他人だと感じなかった。初めて出会った時も、会話をした時も、手を触れた時も、全部全部が馴染んだ感覚だったんです。
まるで、ただ忘れていたというだけのような-----------」
「君は何を言いたいんだ」
その押し伏せるような言葉に、僕は……と、一瞬怯んだ。しかしぎゅ、と瞼を閉じて、奥歯を噛み締めるように引き結んでいた
唇をほどく。目の前がかすんで、嫌な汗が頬を伝った、けれど。
「僕は彼女の騎士だ……」
と。
知らない、知るはずがない。解放戦線の目線で見るルルーシュ・ヴィ・ブリタニアなんて。
夢の中の暗闇で必死に追いかけた彼女が手にしていたのは、一本の長い刀剣だった。守るように抱えていたそれを、どう使ったかも
彼らは知らない。知らないうえで好きなことを言いたい放題言う。
自分はまだ思い出せない。まだ全部が鮮明になったわけじゃない。
でもこんな状態で他人のまま彼女と付き合っていたくはないと、理性が悲鳴をあげているんだ。
「先生……」
たった一言、言えることは。
「僕は彼女の敵だったんじゃない、……味方だったんです」
ずっと傍で見ていたはずなんです、と。
スザクは籐堂の足元に跪いたまま静かに答えた。交わる視線は空中で絡んで、籐堂はごくりと、唾を飲み込む。ふ、と逆に
スザクの肩は下がった。少しずつ見えてきた知っていなくてはならない事の真相。
(あの時のルルーシュのした行動の意味)
もう少し、もう少しなんだと心が激しくノックする。
ああもうじきその内側にいけるよ、と拳を胸に押し付けた。静まるように、宥めるように、激しくなる心音と共に
張り詰めた緊張が収まるようにと。
----------僕は”僕”を知りたいんだ。