殺してやる、殺してやるんだ。
『俺』を殺した、『私』のアイツ。
唇にきず 後編
サアァァァ……---------。
遠く、耳音を打つのは静かに流れるシャワーの音だ。ルルーシュは素肌のまま制服を着たスザクに抱き込まれて
固まっていた。
---------何のつもりだ、と。
いくら騎士だからといって浴室に入ってくることまでは許していない。しかも他人との接触を常に嫌悪する彼だからこそ、
まさかこんな濡れ鼠となっている自分に身を寄せているなんて、そして抱き締めてくるなんて信じられない話だろう。
でも何故か、本当にどうしてか准尉は、ルルーシュの名前を呼んで抱き締めてきた。
先ほどまでの、スザクに図星をつかれて取り乱した様と、鋭く伸びてきた両腕に抱えられたときの、全身に走った強烈な喜びを
思い返して、恥かしさにスザクの肩口で赤面した。
「……ど、して……」
力の入らない手で押し返しても、准尉の身体は離れない。ぎゅ、と強く抱きこんでくる制服の袖はぐっしょりと濡れてしまっていて、
サァァァ……と浴びせられるシャワーの水は二人の全身を湿らせていった。温い温度にスザクが変えたから、冷えてしまうというわけ
ではないが、こうして身を寄せている意味もわからなかった。軽く自棄になってしまったルルーシュを案じてこうしてくれてるの
かもしれなかったが、けれど自分にとってみれば、女のように優しく扱われることが、無性に悔しくてたまらなかった。だから、
「離れろ」
ぐ、と尚更強く腕を突っぱねる。
そこでようやく距離があいて、准尉の顔が見れた。
湯気に霞む翡翠はひたとルルーシュの瞳に合わせられて、次に胸から足へと視線は下っていく。まだ年齢と見合わず未発達のその
肢体を男に知られることは、思ってもいなかったことでただ困惑した。不愉快さに心が一杯になって、紫電を怒りに歪める。
「……何の、つもりだ」
一応弁解の余地は与えてやろうと思って、口を開いた。
「名前を呼んだ無礼は特に問題としない。だから今すぐに俺の前から消えてくれ、これ以上の非礼は罪状扱いになる」
声に、先ほどまでの震えはなかった。『よし』とルルーシュは心中で自分に頷く。
しかしスザクはそうまでルルーシュが言っても退かなかった。むしろ彼の身体は謝罪に膝を折るどころか、後ろの解放されたままの
ドアノブを掴んで、開いたままだった浴室を閉めた。
バシンッ……がちゃり。
重く施錠された音がシャワーに混じる。それに対して『信じられない』とでも言いたげな視線を、騎士へ向けた。
「な、にを……。俺は出て行けと言ったんだ。どうして鍵をかける!」
「---------」
「馬鹿、馬鹿だよお前……今の状態の俺の傍に居て何になる……さっき言ったじゃないか、『俺を救えると自惚れるな』って」
スザクは口を開かない。静かな翡翠でルルーシュを見るだけ。
その整然とした姿勢に、より焦燥は煽られていく。
「っ、いいんだ、-------このまま、で。」
薄い胸元に手を当て、脈打たない心臓を掴むように握る。
「この身体も、心も、あの三年前の日から停まったままで、いいんだよ。このままがいいんだ。
俺がナナリーを殺したあの日から進んじゃいけないんだ、これが唯一、俺が出来る俺の贖罪なんだ。だからもう、頼むから、
そんな目で見ないでくれ……、『ああ可愛そう』なんて見下す他人を見る目で、懺悔する俺を見ないでくれ……!」
床のタイルにかくんと折れた膝をつけて、耳を両手で塞ぎ……蹲った。
視線を頭上から感じても、もうルルーシュからスザクを見ることはしなかった。彼の優しい表情は自分を責めるだけの痛みしかもたない
ように思えて、それが少しだけ嬉しいとも『女』の自分が感じてしまって、殺してしまいたくなる。自分が辛くなりたくないだけで、
楽になりたいと解放されたいと、それだけで弟の手を離した三年前。あの日と全く変わらない根底の部分が揺るがされて、それだけで
ルルーシュは、
「っ!?や、……准尉!」
ずっと動かなかった男の腕が伸びて、がしっと強くルルーシュの細い肩を掴み取り、タイルの上に押し倒された。
子供を寝かすような仕草で、縮めていた両足を身体の隙をついて伸ばされる。ぺたりと湿る床に背中が吸い付いて、
見上げる天井の白さに眩暈がした。そこに映る、男の顔も。
(おとこ……)
スザクが黙って、自分の襟ボタンを指先で外すのを他人事みたいに眺めた。いや、そんな、まさか。
(准尉は、いま男なんだ)
ルルーシュが騎士に向ける恋心。それは思春期の異性に向ける憧憬のようなものだと思っていた。
相手がスザクで、気持ちが増していくのを、さっき名前を呼ばれて感じた。もしかしたら、自分が彼を『殿下』と呼ばせたのは、
『准尉』と呼んだのは、この気持ちに歯止めをかける為なのかもしれなかった。
人を好きになるということは、すなわちルルーシュの中では裏切りとなる。
相手は……弟。
違う、三年前時を停めよう、と決めた自分自身の決断に、かもしれなかった。
「駄目、やめ……やめて、准尉」
「……」
スルリ、と首元から抜かれるネクタイの動きに焦りながら、必死に懇願する。今彼がしようとしていることは、こうして生きて行こうと
誓ったルルーシュの信念を打ち砕くものだと思ったから。
「お願い。痛いのはいや、辛いのは……駄目なんだ、こんなことしちゃ、駄目なんだ……俺が、」
「どうして?」
拒もうと伸ばしたルルーシュの指先を手にとって、軽く唇だけで触れる、吸う。びくんっとルルーシュの膝が揺れた。
その反応と少女の体を見下ろしながら、なるべく怖がらせないよう不安にさせないように、声を落とした。
「憎んでくれたっていい」
「っえ……?」
「僕を、本当に本当に、恨んでくれたって構いませんよ。これは、自分のなかで、貴方のことをどうにかしたくて、してるんです」
「……何を言って……」
「悲鳴をあげるなら今ですよ」
そう言って、外してしまった制服の上着を脱いで、そっとバスタブの端へかけた。
「ナナリー!似合ってるじゃない」
鏡の前で両手を開いたままポーズをとる痩躯の前で、金髪にセミロングの女性が『ふむふむ』と頷きながら近寄って行った。
「アッシュフォードの学生服って、私の体型にはちょっと緩いんじゃないかと思ってたんですけど」
「そんな事ないない。咲世子さんが綺麗に裾も直してくれてあるから、前みたいに躓くこともないと思うわよ」
「あ……」
「ほら、ここに立ってるから、こっちまでおいで」
パンパン、と両手を叩き、少年に立ち位置を教えた。
そちらの方へ顔を向けて、少しだけ前かがみに進んでいく。
「おおっ、いいじゃない!これで中等部までは問題ないわね」
「はい。足の力は大分快復してきて……後は方向と位置だけわかれば、大丈夫なんですけど」
「ふふふー。そうだと思ってミレイさんはこんなのも用意してみました」
得意げなセリフの後に差し出されたものは、手にとってみればアルミ製で重量もない、棒のように長いものだった。
「これって」
「歩きながら使えればいいかな、と思って注文しておいたの。理学のほうは専門外のニーナに手伝ってもらって、色々計算しながら
ナナリーに合わせて作ったものよ。重さもそんなに無いし、いいものに出来たと思うんだけど……」
「はい。すごく。大切に使わせて頂きます」
ナナリーはふわり、と口元だけで笑みを作り、ミレイのほうへ腰を折った。
「これで明日からの入学式も、大丈夫そうだねー。おじいちゃんも心配してたし、ナナリーが学校に通ってくれるって言ってくれただけで
嬉しいよ。もうあんただって来年になったら高校生になるんだから」
肩幅や股下の布地を触って確認する少年の揺れる髪を見ながら、ほうっと息をついて呟く。
その言葉に小さく首を傾げながら、また少年は優しく笑った。
そして視覚はもう無くなったはずなのに、背後にある自分自身を映し出す鏡を振り返って、満足そうに口端を吊り上げた。
まるで成長した自分の体躯に、満足したように。
閉められない水道のカルキが冷たく笑うように水を出している。
その音と動きと場の流れに呼応するように、ルルーシュは組み敷かれた身体を小さく揺らされながら、それでも男の手に身を委ねまいとして
力なくスザクの背中に腕を回していた。それには構わず、彼の舌が顎のラインを伝ってぬるりと首筋を舐める。
「ぁ、ん……」
その声がシャワーに掻き消されることなく、お互いの耳朶を打った。
感じているのか、やはり生理的に拒絶して声をあげているのか解らず、シャワーの水に湿っていくスザクのシャツを強く握りながら、
タイルと男の身体に挟まれた肢体をくねらせた。その動きをどうとられたのかは知らないが、胸元を彷徨っていた手の動きが止まって、
押し潰して痛めたりはしないようにと、男の逆の手で腰をあげさせられる。
「……あ」
僅かに浮いたその隙間に、スザクの手が納まった。
それで寝かされた身体は楽になったが、しかしそれでルルーシュの身体が解放されたわけでもなかった。拒もうと身を捩っても
スザクの舌や、唇や手が皮膚の上を彷徨って、胸の頂に触れてきたり、開いた口元を摘まれる。愛撫ではなく、一々ルルーシュの
身体のひとつひとつあるパーツを確認しているようにもとれた。その行動がやはり刺激ともなるのか、浴室を満たす湿気に
頭を朦朧とさせながらも、確かにルルーシュの身体は、熱く潤んできてしまっていた。
「は、あっ……く、んん……っ」
突然、腰を支えてるのとは逆の、ずっと胸に触れていた指先が股下へと降りていた。作為をもって動くその指先が、少しだけ成長の
過程をみせる茂みの辺りに触れて、ルルーシュが反応している証ともとれる蜜口を撫でた。くちゃ、ぴちゃ、という粘ついた音、
つまりはルルーシュの感じている証であるその蜜に対して目を細めるように翡翠が穏やかになった。
その顔を直視してしまったルルーシュは恥かしさに赤面する。
「やっ」
バッと背けようとした顔を、腰を支えていた掌に包まれてコツンと額を合わせられて。
-------------お互いの息が触れ合うような近さにドクンと大きく胸が鳴る。
「じ、准尉」
「ええ」
「どして、こんな、……風に?」
「普通ですよ、これが」
自分の身体の変化に戸惑いを覚える表情に、スザクは目だけで微笑んで、落ち着かせるように痩躯を緩く抱き締めた。
そうして片手で拘束したまま、触れていた敏感な部位への刺激を強くする。最初は触れるだけだった動きを、二本の指を揃えて
粒の部分を擽るものへと変え、ふるふると中から溶けていくその刺激に、官能にルルーシュの力が抜けていく時を見計らって、
ぷっくりと膨れ出したそこを、突き出すように伸ばした舌で舐めはじめた。
「ひっ……ゃあ!あんっ、やっ嫌……!准尉っ、」
腿の間に手をおいて、ぺろぺろと顔を埋める男へと声をあげる。静止しようと肩に指をかけても押し返す力にはならず、逆に縋るような
ものになってしまっていた。
「ん、んんっや、んぁっ、は……う、んくっ」
収縮するようにひくひくと最初は動いていたそこが、とろりと熱い蜜を出すまでに潤み、スザクの侵入を受け入れていく。彼の
差し出すように伸ばされた舌が熱さをもって、固く主張しだした肉芽をほじくるように吸い出すものにまで進んだら、
タイルの上でルルーシュは、白い首を快感に仰け反らせながら、うわ言のように息を吐き出すだけになった。
「駄目、駄目だ、ぁっく……俺……も……っ」
小動物の鳴声のようになっても、スザクの動きは変わらなかった。
吸い出す唇は襞に包まれた膣のほうにまで進んで、『もっと』と割り開くようにルルーシュの足を開かせていく。
拒む力がもたないほどくたくたとなった身体は、未だ流れるシャワーの水に湿ったタイルの上で、ただ男のもたらす刺激にびくびくと
震わせるしかなくて。
「ふ、う、うぅっ……、んっ……」
もう全身から、拒む余力が潰えていた。
その頃合をずっと見計らっていたスザクは、秘穴を溶かす舌を引っ込めて、ゆっくりと身を起こす。
そこで見たものは、未発達の少女の体を紅く染めさせて、白い面差しに上気した頬に生理的な涙を零す『女』のルルーシュであった。
「……っは、ふ、く…-------」
見たこともないほど熱を孕んだ紫電が、翡翠と絡む。
スザクは、口に含みきれずに垂れた液体を指先で拭って、解れきり、こぷこぷ……と粘液を溢れ出す綺麗な色したその蕾に、
視線を奪われていた。まさかこんなに、主君の媚態がクるなんて。
ごくりと咽喉に溜まった唾を飲み込み、自分のズボンの前を寛げて力の抜けたルルーシュの足首を持ち上げた。ぼんやりと天井を
見上げたまま呆然としているルルーシュは、男のその行動が次になにをもたらすのか、知らない。
グ、と前かがみになった体制に重力を傾け、怒張し張り詰めた分身の先端を、ひたりとそこへ宛がった。
熱く、ルルーシュ同様昇まったスザクの神経も、ギリギリのところで踏みとどまっている。
皇女を己の欲望のままに蹂躙するか。思い出したかのように優しく抱くか。
抱えた足元の奥にひっそりと根付くのは、少女の純潔の象徴でもある皮膜である。ルルーシュが誰にも抱かれず、女とも男ともつかない
『自己』を護る為の楔となっているもの。
別にそれをスザクは肯定するつもりはない。-----それでは、困るのだ。彼女が彼女自身で時を停めて、戦争の最後の最後で
その身を弟君に差し出してしまいそうで、怖いのだ。
なら騎士として裏切ってもいい。はやく自分が、皇女、主君、ルルーシュのことをそういう目で見ている下衆な男の一人だと自覚して、
”要らない”からといって『俺』の自分も『私』の皇女も捨てたりせずに成長して欲しいから。
顔も声も言葉もまるで覚えていないといっていい弟に全部くれてやったりは、しない。ルルーシュはルルーシュ自身の中で成長し、
過去のことを清算しなくてはいけないのだから。
「は、ぁは……は……は、ぅ……」
軽い絶頂を味わったのか、空ろな眼差しで忙しく胸を喘がせている。
上体を起こし、そんなルルーシュの細い半身を抱えたその体勢で、もう我慢ならないくらいに主張しだした自身の熱を、
ゆっくりと秘穴へ沈めていった。
「っ……!?」
瞬間、意識をはっきりとさせたルルーシュは声に無い悲鳴をあげる。暴れようとして振り上げた足は、難なくスザクの肩へと担がれて
しまった。ずぷり、という生々しい音とともに、内部の熱と肉が絡まって、卑猥な音が空気に飛び散る。
「あ、-------は、ぁあっ……」
肉物的なまでに皮肉を破って突き進んでくるそのスザクの熱、ルルーシュの姿態によって高まったそれは別の生き物のように
痛みに喘ぐ皇女を無視して、侵入してきた。前進してくる度に結合が深まり、奥を目指して先端が皮肉を掻き分ける。
「いや、嫌……!嫌、あ……っ、やめろ、やめろ准尉……っ」
「------殿下」
ぐちり。
視床下部の奥底で脳内を焼ききるような、痛みなのか別の何かなのか、わからない刺激が肉と擦れてルルーシュに伝わる。
拒むように逃げようとした腰も、男の暴行に震える痩躯も押さえつけられてしまって、頼りなく震える咽喉からは小さな嗚咽が
溢れてきてしまっていた。
(あつ、い)
酸欠のような錯覚に支配されながら、奥へ奥へと吸い付いてゆく秘穴の襞の様子に、眩暈を覚える。
瞼の端からはほろほろと涙が零れてくるのに、女の身体は反してスザクの熱を受け入れている。もうどうか、お願いだからやめて欲しいと
哀願してもスザクは聞かないのだろう。そんな目をしている。
(なら、自分は----------)
男の手によって、停めていた時間を動かされるということなのか。
ナナリーと共にいたルルーシュを、変えて……?
「嫌ぁ……っ!!」
床のタイルに投げ出していた腕を、無我夢中に振り乱した。ぶんっと横やりに動かしたルルーシュの指先が、スザクの唇を掠める。
タラリ、とそこで血が流れた。先日シュナイゼルにも殴られて腫れた唇。そこに新たな傷が作られる。
そんなことには気づかず、半ば半狂乱となって悲鳴をあげた。
離してほしい。
そう、伝えようと大きく息を吸い込んだ途端、しかし止まっていたスザクの動きが再開された。
「ひぃっ!は、あっく、う」
「っ、く……」
「やだ!お願ぁ、ああ……っ」
溜まった目の端の雫が頬を伝って、ぽたぽたと顎と首を濡らしていく。
屈みこんでくるほど近くスザクの身体が曲げられれば、その分引き寄せられる力も強くなって、もっともっと奥にまで侵入してくる。
その、熱。今にもはじけそうな程の大きさをもった凶器にも近いそれが、ルルーシュの内部の襞に護られるようにしてある皮膜へ
ようやく辿り着いた。
「……っ、は……」
予想以上の締め付けと、皇女の中の熱さに、スザクから呻きのような声が上がる。
やはり無理な姿勢と行為であるからなのか、秘穴の端から鮮血がコポリと溢れてしまっていた。
そして、再び力なく倒れた皇女の開いた口から、小さく小さな音した言霊が届く。
「…っれ、じょは、ゆるせなくなる……っ」
明瞭とは言いがたがったが、それでも昏い響きであるその声は、熱に湿る浴室には充分よく響いた。
「それ以上、したら、……ほんとに……准尉、お前のこと、許さないから……。許さないから、絶対……っ!」
ふらふらと力なく上がった掌を、男の濡れたシャツに触れさせる。力を込めて掴めないのは、指先の神経まで痛みと屈辱で侵されて
しまっているからだ。
「許さない、から……だ、から---------あぁっん!」
皇女のうわ言に突然交じった喘ぎは、スザクがその身体を引き寄せて彷徨う手首を自分の背中へと回したからだった。
故に近くなってしまう身体の距離。限界まで折り曲げられた少女の痩躯。
ぐぐ、と折れた腰が前後にズ、ズズと動かされる度、ルルーシュが請け負う痛みも熱も増大し、
「うっ……ぁ、ああっ!」
子供のように男の背にしがみつき、声をあげることしか出来なかった。
スザクは痩躯を抱えたまま、ルルーシュの浮いた細い腰を持ち上げて、最後の仕上げとばかりにその皮膜を突き破る。それは一番ルルーシュが
頑なに護って、『自己』として隠そうとしたもの。無意識に成長……時を停滞させたもの。それを破ることはつまり、
隠滅させようとしたルルーシュの『女』を生まれさせるものだった。本来の、ルルーシュの『自己』であるものを。
「あ、ああ、あ……っくぅ」
つー……と、侵入とともに切れた肉から出るものとは種類の違う体液が、股下を伝ってタイルに落ちる。
それが潤滑剤となって、じゅく、じゅくと抽挿は更に激しくなっていった。もう声にすら気持ちを表せず、意味のない喘ぎを
零れさすばかり。拒絶する神経も感覚も、男の動きに翻弄されて。
(……ろして、やる)
揺さぶられ、男の熱を暖かく締め付け、解放と絶頂を共に迎えながら、小さく小さく呟いていく。
(ろ、して、やる、ころしてやる、殺してやる……殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる)
無理やりに体を繋げられ、中を蹂躙しあろうことか護り通していた最後の膜さえ、男に破られた。
ルルーシュはずっと、二度目に出会って手を結んだその時からスザクに憧れていた。彼は自分に無いものを沢山持っていたから。
ナイトメアの操縦技術、騎士としての能力、『男』である身体。ブリタニアを憎む気持ち。
(ずっと俺が欲しくて欲しくて堪らなかったもの)
(それをどうして邪魔するんだ)
(何でよりにもよってお前が、俺を女に変えるんだ……)
『最近、お姉さまが遠くに行かれたような気がして』
『行かないよ。俺はずっと変わらないから。それに、俺はお前に嘘をついたりはしないよ、お前にだけは』
別離して憎まれても、自分が『俺』のままでいれば、けして弟との繋がりは護られていると思っていた。
その信念に似た思いをずっと持ち続けていれば、ルルーシュ自身は死んでしまうかもしれなかったがそれでもいいと思っていた。
なのに、
「ど、して……?准尉……」
殺してやる、---------俺の『約束』を殺したお前、殺してやる……
内部の締め付けと同時に達したルルーシュの身体は、魂が抜け切ったようにコトリ、と床の上に倒れてしまった。
薄く上下する胸と、欲のままに突き破った純潔の身体を静かに見下ろしながら、スザクは自分の顎に垂れる血にも構わず、
僅かに開いたルルーシュの唇に自分のそれを合わせた。
口付けを、角度を変えて数回深く。
「ん、ふ……」
組み敷いて意識の失ったルルーシュの咽喉からはくぐもった息が洩れた。
ゆっくりと身体を離して、苦しそうに青ざめた顔を見せるルルーシュを見下ろす。肩にまで短くなってしまった黒髪を指先で
整えるように撫でて、先ほどまでの行為を思い返すような熱い息を吐いて、自身をゆっくりとルルーシュの中から抜いた。
「殿下、…………」
耳元に小さく呼びかける。答えないその静かな寝顔に泣きたいように翡翠を細めて、迷いなく主君の名前を囁いた。
「ルルーシュ」
過去に交わした約束を破ったのは、スザクも同じだった。
『准尉?』
出会って数日の頃。まだスザクが後宮への立ち入りを許可されていなかったから、話をするとなればかならずといって
中庭の外れにある白亜の離宮に召喚させられていた。
『そう。俺の名前を呼ぶのがそんなに嫌なら、殿下でいい』
『殿下……』
『准尉っていうのはな、ナイトメアに搭乗するのに必要な最低位の称号だ。ちなみに、皇族の騎士としてのも』
『---------あんたは僕をどうしたいんだ』
『別にどうとも?ただ、刃向かうには力が必要だろ?それを俺がくれてやるよ』
『力、って、……そんなことを、どうして僕なんかに』
『お前が俺なんかよりもランスロットに騎れて、実働的な戦果をあげられる人間だからだよ。申し分ない』
『…………』
『俺の騎士になってランスロットのパイロットになれ。イレヴンだなんだと言う雑音も納まるだろ』
『……貴方は、それでいいんだね』
『ああ結構だ。主従の誓約を結べば名前を呼び合う必要もないからな』
妥協できる程度でいい、俺に尽くせ。変わりに名誉と身分を渡してやるから。
そう彼女はあの時言っていた。
誓約を交わしたあとも近くなったのは距離じゃない、自分のルルーシュへ向ける感情の変化に気づく切欠だった。
生易しい信頼や愛情ではなかった。だって破滅に向かう彼女の姿勢をこうして自分は否定してしまったから。
そうした後で、ルルーシュに根付く自分への羨望や恋情はどうなるのだろう。
自分を縛り付けて閉じ込める、檻の存在にも気づかないで。