自分ではそう重い状態ではないと思っていただけ
に、騎士団との攻防の後、即入院を医師から命じられたコーネリアは
ようやっと外界へと出れるその開放感に胸一杯深呼吸をする。
そして『一人でも帰れる』と前もって連絡していたのに、何故かご丁寧に車を用意して迎えに来ているギルフォードに
溜め息をついた。
「ドクターから一日早く退院出来る、と電話があったものですから……」
「それでお前は政庁をほっといて、こちらへ来たというのか?」
呆れたように目を見張るコーネリアに、ギルフォードは緩んでいた顔を片手ではたいた。
「すいません。あちらには特に自分が居なくても良い、と今日は思いましたので」
「あちらには、……って、-------まあ確かに枢木やジェレミアも居ればどうにかなるだろう」
それに度々会いに来ていたルルーシュからは、現在は特派がランスロットやガウェインのメンテナンスに動いている、と
聞かされていた。
特にこれといった事態も起きていないのだろう。
(ルルーシュにももっと自分のことを考えさせなくてはならんからな……)
まだ少しだけダルさの残る身体を両足で自立させ、前を向いた。
ギルフォードごしに見る久しぶりの青空は、どこか眩しかった。
荒野で君を見失った
クラブ活動開始時刻に突入した学園内は、ミレイ同様、両手に工具箱を手にしていたり、二人がかりでベニヤを運んでいたりして
スザクも『まさか』と思っていたけれど、現実その予想は的中していた。
「もう文化祭なんですか?」
「そう。明日ようやく前夜祭なんですよ!よかったら殿下も参加してって下さい」
ルルーシュ殿下が突撃で参加してくれたら、みんな喜ぶだろうな〜(主に男子が)
と、真向かいに腰掛けたミレイが主君へと誘いをかける。
そんなことたまったもんじゃないと思うスザクは、無表情の中にも冷たいものを潜ませて、ミレイを見た。
……が、そんな視線だけで、ラウンズの前にいても臆しない彼女を諌めることは出来ない。
しかもまだ自分たちは学食から出ていないのだ。そろそろ政庁にだって戻ったほうがいいだろうに。これもすべてジノの所為なんじゃ
ないか。
横目でそろり、と翡翠で睨んでみせれば、そのラウンズの一人ジノという男は、ミレイの言葉ひとつひとつに興味津々といった感じに
うんうんと頷いている。アーニャはポケットから携帯を出してそれに集中していた。
何にしても、学生服の中に私服姿が交じる今の自分たちの集団は、学園の中では異色であった。
「スザクがもう少し生徒会に出て来てくれてたら、こんなに慌しく準備しなくてよかったんだけどね〜」
口を釣り上げて、美人な顔に更に笑みを作る。細い眼差しにそっと覗かれたスザクは、まるで襟首を掴まれたように肩を
竦めてみせた。
「政庁のほうで仕事が立て込んでたんですよ」
「ふーん。まあそうだとしても、もう少し生徒会のほうに連絡入れるとか、そういうこと出来たんじゃないの?」
「そうですね」
「……ですね、じゃなくて、現に私はスザクの怪力というか腕力というかを期待してたんだけど」
「ああやっぱり」
殿下がミレイの切実そうな言葉に苦笑いで頷く。そして途端申し訳なさそうに眉を下げた。
「すいません、こちらのほうも、少佐を拘束しすぎたみたいで……。もとは私から『学校に行け』と言ったのに」
これじゃ言ってることと反対になっちゃってる、と眉を寄せる。
(けど、そんなのは殿下がさせたくてさせてたことじゃないでしょ)
むしろ僕が自分で選んで、迷惑にも傍に居ついたんだから。
スザクはルルーシュの垂れた頭を後ろで見ながら、そう思った。彼女はいつも言い訳しない代わりに、自分を責め立てるところが
あると思う。スザクの場合ならば、……いやそうじゃなくても、そんな必要は無いというのに。
「いやいや、生徒会だってスザク以外にも優秀な子は一杯居ますよ。殿下が心配なされないで下さい。ただ、ちょっと
先日のテロがあってからか、学園のほうに来ない子が居て……ね」
「来ない子って」
カレンのことか、と視線で聞いた。
「……ええ、何でか知らないけど、シュタットフェルトのほうにも帰ってないって」
黒髪が背後にいるスザクを振り返った。そう。カレンは騎士団のメンバーだ。
それもあの紅蓮という機体を任されるほどだから、相当重宝されている存在だろうと思う。
セシルから、ガウェインからナナリーたちが海へ転落したと同時に、港のほうへと駆けていったのは見た、と報告を受けたが
真偽はどういったものか。
「生徒会もほんとに人数居なくなっちゃったのよね」
「そう……ですか」
「ええ」
「咲世子さんから聞いたんだけど、ナナリーも居なくなったっていうし」
ぴく、と微かに細い肩が撥ねた。
スザクも心臓を掴まれた思いで、ルルーシュを見る。すぐ隣に立っているジノならばその強張った紫電の表情に気づいてもいいものだが
彼の興味はそこではなく、突然出て来た『ナナリー』という名詞に反応した。彼は皇族のことを当然知っている。
「会長さん、ナナリーって」
「え?ああ」
ジノの疑問に、突然だったわね、と笑って改めて説明をしようと口を開いた。が、ルルーシュがすかさずそれを止める。
「ミレイさん」
「……は、い。何でしょう?」
「前夜祭のことは、予定的にちょっと確約は出来ないんですけど、少佐だけでもお手伝いにはやれるように手配しますので、
準備のほう頑張ってください」
「まあ、本当ですか?それは助かります」
でも殿下も来て欲しいな〜とミレイが再三の誘いをかける。ルルーシュはそれにあはは、と小さく笑って
後ろ手でスザクの制服の裾を掴みながら、『時間が合えば』と言って、頭を下げた。
彼女にとってもスザクにとっても、ナナリー=ゼロという真実を公然に知られるのはまずい。ジノはラウンズであり
軍内の中枢を担う、いわばトップにいる軍人だった。彼の耳に、死んだはずの皇子の名前が届くのは、避けねばならない。
ミレイだって、まだナナリーのことをナナリー・ランペルージだと認識しているのだから。
そこでラウンズから『ナナリーとは?』なんて訊かれたりしたら、彼とゼロの関連性に気づいてしまう要因になるかもしれない。
スザクは白い手が伸びてきたのと同時に、自分からも手を伸ばしてぎゅ、と握った。僅かに震えていたのは仕方ないと思う。
とりあえずミレイには『明日のことはまた夜連絡します』と言って、ラウンズの二人の説明はせず
とっととその場から退散することにした。
「…………ふーん」
ジノもアーニャも、もう帰るものだと思って、自分たちの後についてくる。
しかし、どこか追求してくるような青の視線を、スザクは背で感じていた。けど主君が言うなということなら、
スザクから口を出すことではないのだろう。
(------------でも)
すっかり特派に居ることで生徒会から離れてしまって、学園にまで及ぼしたテロの影響のことを深く考えていなかった。
ナナリーも、カレンも、居ないということはそこから関連性が出てきて誰かが不思議と思うのではないか。
後ろでは神妙な顔つきからガラリと変わった金髪が、あちらこちらを歩きながら見回していた。アーニャも変わらず撮影している。
どうか踏み込んでこないでくれ、とスザクはルルーシュにかわって切に願った。
久しぶりに聞いた『ナナリー』という名前に、まだルルーシュの掌は震えている。
感じているのだ、自分のなしたことから生じた責任を、喪失を。
ユーフェミア以上に、未だ。
政庁に戻ったら、既に会談の準備は完了された後だった。ジノが行きがけに手渡したカードをひらひらと遊ばせて
ロイドが『こっちですよー』と地下から出迎えにくる。
「結構長いランチタイムだったようだけど、何かあった?」
「いえ、その、午後のクラブ活動の時間と重なってしまって……」
スザクの後ろから俯いてやってくるルルーシュの白い顔に、ロイドは不審に思ったのだろう。
彼女の黒髪をじーっと見て、スザクへと訊いてきた。
「お疲れ?」
「……本当はもっと早く戻ってこようと思ったんですが」
「何だスザク。私たちの所為だと言いたげだな」
会長に出くわしたことを説明しようとしたのだが、よく解らない勘違いをしたジノに後ろから首を回され、絞められる。
ぐえ、と気管を押さえられるが、どうにか腕の下に手を差し込んで、彼から距離を置いた。
「そんなこと言ってないだろ、まだ」
「スザクくん。『まだ』なんて言ったら深読みされちゃうよ」
「だってこの人たち」
本当に勝手なんですよ!とロイドへ吠える。後ろでは『シュナイゼル閣下に会うからまた着替えなきゃ』と
変わり身も早く、先ほどスザクの首を絞めていたジノがルルーシュの傍へ寄り添っていた。
(何て奴……)
眩暈がした。
「殿下、御気分は大丈夫ですか」
「あ、ああ、うん」
「ではヴァインベルグ卿と僕は着替えてきますので、アームストレイム卿のことはお願いします」
お前はこっちだ、と言って、今度はスザクが逆にジノの首に手を伸ばして、床の上で引き摺るかのように
地下へと降りていった。
「なー、何でルルーシュ殿下と話そうとすると引っ張るんだ?」
「気のせいじゃない?」
後ろからしてくる暢気な声に神経を逆撫でされる。
その更に後ろでは、ルルーシュがその紫電でジノとスザクのことを見つめていたが、ずんずんと進んで行くスザクは気づかなかった。
「すいませんアームストレイム卿……先に、部屋に行っていてもらいますか」
「着替えのことなら私は必要ない。会談の場に同席するつもりはないから」
ロイドとの間で視線を彷徨わせていたルルーシュは、まずアーニャを先に行かせようと、控えめな口調で先に行っていてほしいという
意志を示したが、そのアーニャから『必要ない』と言われて、面食らったように紫電を見開く。
「え、でもヴァインベルグ卿は……」
「彼は好奇心が強いから。でも私は全く興味がない。みんなが地下にいる間監視が必要であれば
この基地に派遣されているというジェレミア卿などに任せればいい。私はずっと応接間にいる」
それだけ言って、パタパタと廊下の先を走っていってしまった。
ロイドと共に暫し固まる。
「何だあれ、ロイド」
「自由な人なんじゃないの」
規格外の性格に疑問符しか浮かべられないルルーシュに、いちいち理解不能な人間に対して気を配るな、とロイドは
呆れたように肩を下げる。そして途端真剣な顔つきになって、まだ微かにぎこちない動きのルルーシュの薄い肩へ
指先を置いた。
「殿下」
「……うん」
「僕、さっきセシルくんに言われたんだけど」
「ん?」
「スザクくんは貴方に重過ぎましたか」
(え)
固まる。目の前に静かに覗く銀瞳があるから、余計に。どうしてロイドはいきなりそんな問い掛けをするのだろう。
ルルーシュの顔の血色が更に悪くなったのが解ったからか、見つめてくるロイドの眼差しが足元に逸らされて
更に険しくなった。
「いやね」
溜め息をつくように言われる。
「あんな風に、干渉ではないが……ストレス発散のサンドバックくらいにはなれる存在だと思って
僕は貴方に差し向けたこともありました。以前はね」
「…………」
「今となっては、どうです」
「どう、って?」
「引き摺るように、痛みますか、まだ」
「--------------」
「もし、他人のことをそう感じるのならば、まだ貴方は英国には戻らないほうがいいと思う」
あそこにはスザクやロイドとは真逆の思考を持つ人間が居るから、と続けられる。
……けれど、そんなこと、実際には些末な問題であると思う。
だってどうせは、どんな人であれ、ルルーシュ自身が耐性をつけていかなくてはいけない問題だから。
今ルルーシュがスザクへ持て余すようにしているこの気持ちと、ナナリーから逃げるように避けていたあの感情とは
結ぶべくもない違いがある。
でも、ロイドがルルーシュにこうして確認を求めているのはきっとそのことに対してではなく。
ルルーシュがシュナイゼルの元に帰って、そこで自分自身が選択しようとする問題に対して
ロイドは『本当にいいのか』と訊いているのだ。
(でもそこから逃げる道があったとしても、それを選んだら俺とユフィは……)
「殿下、聞いてください」
「----------、」
珍しく、白衣の腕に力が篭る。触れているだけに思えた指先は広げられて、ぎゅ、と握るものに変わっていた。
ただ眼を見開いたまま、ロイドの言葉を待つ。もしかしたら足が震えてしまっていたかもしれない。
「貴方は、英国が嫌で、飛び出してきたんじゃない」
目の前に異母妹の残像が蘇る。
「閣下のもとから、離れる為にエリア11へ来たんです」
がくん、と、精神ごと揺さぶられる思いだった。
「ロイド……」
どうして今更そんなことを言うのだろう、と支えられた肩が強張った。いつもより近いロイドの気配が
余計居心地の悪さをルルーシュへ与える。
けれど、その言葉は誰でもいいから、ルルーシュが言って欲しかったものだった。
「--------ロイド」
「殿下」
「有難う。でも俺は、多分また兄君と会わなくちゃいけないと思うから」
そっと掌を掴んで、自分の肩に乗せられたロイドのそれを引き離す。
そしてなるべく笑っているような響きが篭るよう、口端を歪めてしまってもいいから、笑みの形になるよう
ロイドの顔を再び見返した。
それを受けて彼がどう思ったか知れないが、でもこれが今のルルーシュの精一杯であった。
強がりがあるなら、その強がりだけで、今は両足で立てる。
異母兄から逃げる自分の弱さにだけは負けたくないから、
ルルーシュは作り笑いをしてでも、部下である彼に『大丈夫だ』と、-------------きっと、
今と変わらぬように、これからも言うのだろう。
そう思った。
学食へ行く為に着替えたワンピースはそのままに、執務服だけ肩に羽織って、ルルーシュはジノも着替えているだろう
スザクの部屋まで足を向けた。
すぐ隣の特派のブースでは、既に準備が整えられている。余計な時間はとられたくはない、のだが。
「スザク?」
ひょっこりと顔を覗かせて室内を見れば、そこには特派の制服に再度着替えたスザクしか居なかった。
え?と首を傾げる。
「ヴァインベルグ卿は……」
「会談には、殿下と僕だけがいいと思ったから」
「どういうこと」
ネクタイの首をくん、と絞めながら、ゆっくりとルルーシュの前までやってくる。
いつもは身体を丸めて寝転がっている彼の布団が視界の端に見えて、場違いにも、此処は普段のままの慣れ親しんだ場所なのだ
ということに気づいてしまった。
もし、……ルルーシュに先行きを決めるサイコロを握るチャンスがあるのなら、
彼と、シュナイゼル、二人の前で思いのまま話すことがそれではないのだろうか、と思った。
(スザクもそれを知っている)
「----------スザク」
「殿下……」
気づけば、息が触れそうなほど近くにスザクの顔があって、純粋に紫電を見開いた。口を小さく開けて、声にはせず再度
『スザク』と名を呼ぶ。そうしたら胸元のネクタイに伸びていた彼の手がルルーシュの手首を掴み、手前へと引いて
自分の肩口に埋めるように抱き締めてきた。
「……う……っ」
呼気が、うまく続かず、痛ましげに眉間を寄せる。
今度は本当に声が出せなかった。
でも、言いたくて。ちゃんと言葉にして伝えておかないと誤解させてしまうと感じて、
頼りない動作であったがけれど、背に回した腕に込めた力は強くして、彼の胸を包んだ。
「----------殿下」
合わさった所から響いてくる心音が、驚くほど速かった。
ああ本当に。
本当にこの男は。
「俺」
「はい」
「ちゃんと、此処に、居たいって思う……本当に」
「……はい」
「スザクと居たいって、……ずっと居られたらどれだけいいだろうって、思う」
「…………」
無言でひとつずつ言葉を噛み締めるスザクの身体を、一層強く抱きしめる。
「そんな風に思うのはきっと、生涯でスザク一人だ。だから、信じて。……それだけはお願い信じて」
指先はもしかしたら震えていたかもしれない。
(…………嘘だ)
でも、告げられたほうのスザクは、その言葉のあまりの貴重さに、あまりの大切さに、
受け止めきれていなかった。
(けど)
小さい背中から、じかに暖かみを感じる。
今は誰よりも近い距離にいる。
爪先をあげて、細い腕で自分の身体を抱いてくれている。
見っとも無くシュナイゼルへの本心を聞き出そうと寄っていった自分とは、比べようもない純朴さだった。
愛しかった。
全部彼女が欲しかった。
「------------なら、」
自分の命を手にしている女であり、主君でもある彼女のことを疑う気は毛頭ない、これっぽっちもない、けれど。
スザクはルルーシュの腕の中から身を低くして、床に膝をつくと瞼を下ろして天へ顔を向けた。
そこにいるルルーシュへ祈りを捧げるような……いや、祈っているような仕草にも見える、それ。
「え……?」
ルルーシュはこの感情をどう思うだろう。
ナナリーやシュナイゼルやロイドのものとは全然種類の異なる、スザクのもの。
愛情というのはきっと束縛の仮の姿だ。
(……自分のことをどうか笑って欲しい……)
「キスして」
「っ----------」
「今なら、誰も来ない」
「…………」
「してくれたら……信じる」
ナナリーからも、シュナイゼルからも、自分の手でルルーシュを護っていいのだということを、信じられる。
(身勝手かもしれないけど、でも、拒まないで欲しい)
閉じた翡翠に知らず力が篭った。目の前に立ち尽くす彼女の動かない気配。もしかしたら黙って立ち去られたかもしれない、
この突然の好意に呆れられたかもしれない。
しかし、上を向いたまま自分は引き返すこともなく待つことしか------------。
最初に、……ちゅ、という小さな水音がした。
触感がついてきたのはその後で、”する”のではなく”される”ことで得られる感触に、背筋が粟立った、ような気がする。
次いで大きく目を見開いたところで映ったのは、目元を少し染めながら、スザクの頬を両手で挟み、口付ける、
ルルーシュの姿であった。
膝をついて、腰ほどの高さにある自分の顔へ小さな背を屈めて唇を合わせてきている。
「ん……」
数度、羽根で撫でるような接触を続けていた口付けが、今度は浅くだが舌が入り込むものになった。
もうそこまでされてしまっては、信じる信じないもない。
ルルーシュが必死に答えてきてくれている。自分の我儘以外の何ものでもない独占欲に。
それならばスザクのとるべき行動は、ひとつだけ。
「殿下」
「スザク」
お互いの名前しか呼ばなかった。
スザクの掌は屈みこんだルルーシュを支えるように彼女の腿に置かれ、下から掬い上げるように両腕へ回り込む。
包まれたルルーシュは自分のしたことに赤面しながら、それでも、あまり見ることのできない柔らかい表情をする翡翠に
視線を奪われていた。
回した腕で掻き抱くように執務服ごと主君を抱き締める。
(このことは、絶対忘れない)
時刻は夜半過ぎ。ラウンズの二人がやってきたのは昼の前。
もうその時間から半日以上が経っている。あと少し、いやもうすぐ、ルルーシュとスザクはシュナイゼルと会う。
(例えあの男に自分の何を暴かれたとしても)
ルルーシュだけは絶対に護る。何を犠牲にしても護る。
この尊敬と愛情が、独占欲ではないという証の為にも。